第169章 アプローチするのに、そんなにコソコソするものか?

ドアを開けて車を降り、そのまま家に入った。

中島美奈は彼の姿を見つけるなり、ぱっと駆け寄って出迎える。柔らかな笑みを浮かべて――

「お帰りなさい。疲れたでしょう?」

横尾孝人は淡くうなずき、スーツの上着を脱ぐとソファへ腰を下ろした。無意識に、太ももを軽く叩くようにして脚をほぐす。

だが中島美奈は、その不調に気づかない。視線だけが彼の周りを一周し――そして、ほんのりと落胆が滲んだ。

今日はバレンタインデーだ。何度も念を押して、催促までした。だから、彼が花やプレゼントを抱えて帰ってくると信じていたのに。

――手ぶら。

何より、付き合ってから初めてのバレンタインデーだ。こんな雑な扱い...

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